ジャケットMMA≒柔道+空手 KARATE+JUDO≒KUDO 御茶ノ水(淡路町・小川町)にある総合格闘技道場。

(社)全日本空道連盟 総合武道 大道塾 御茶ノ水支部

主将のコラム

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column#12

2011年無差別全日本所感

 優勝した堀越亮祐(日進)については「地に根の張った」「常に淡々としていて、延長戦の最後まで甘えの生じない」「打たれた瞬間にも心を乱さず打ち返して相手の気持ちを削っていく」…そんな組手だと感じた。
 これまで彼は、それほどランクの高くない選手にも敗北を喫してきたし、これからも、意外な相手にあっさり負けることがありそうな気がする。
 だが、それは、当てたか・当てられたかというポイントの評価による現象であって、気持ちを折ったか・折られたかという勝負でいえば、負けたことのない、これからも負けない武道家かと思う。
「中量級の選手が、軽量級の選手と重量級の選手、双方を下して無差別を制する」ことは、空道30年の歴史で初めてのことで、ある意味「軽量の選手が中量・重量の選手を連破して優勝する」ことより偉業かもしれない。彼の組手が表層のテクニックに頼るものでなく、深層のマインドの部分で勝負するスタイルだからこそ、同階級の相手のみならず、自分より大きい相手にも、自分より小さい相手にも、通用するのだろう

 準優勝のキーナン・マイク(成田)は、まだまだ荒削り。でも、少しずつ、少しずつ、本当にすこしずつながら、丁寧な技術になってきているのも確かだ。恵まれた身体に、努力を惜しまない日本人のマインドを併せ持っているとしたら、今後、おおいに期待できる。

 3位の佐々木嗣治(帯広)は、以前のケンカ的なスタイルに加え、軸をしっかり保ったまま打撃の攻防を行うスタイルが相まって、34歳にして成長の跡をうかがわせた。その成長は、吉祥寺支部から帯広支部に戻った田中俊輔の影響を受けてのものだろうか? そうやって技術が、ある道場から別の道場へ伝播されていったのだとしたら、素晴らしいことだ。
 キーナンを投げからのキメで圧し、決勝進出を目前にしながら、ヒザの負傷で担架に乗る結果に終わったのはなんとも残念。あの負傷は、自らのミスというより、あの状態で相手が投げに拘った場合、必然的に起きてしまう「事故」のようなものだ。
 おそらく、内側・前十字靱帯は完全断裂か、それに近いダメージを負っただろう。復帰までの道程は平坦ではないが、本来であれば、無差別王者の称号を得ていた可能性が高かったことを考えれば、このままでは終われぬだろう。ケガで満足に体を動かせぬ期間は、技術の探求を重ねるよきチャンスでもある。試合マットへ帰ってくる日を待ちたい

 4位の中村知大(早稲田)は、出入りの激しいフットワークや担ぎ技を得意とするだけに“小よく大を制しうる”“着衣総合ならではの”組手を体現しているといっていいだろう。そういう意味では、山崎進に続く逸材なのかもしれない。
 ただ、惜しむらくは、世界大会、ワールドカップ、無差別全日本、階級別全日本のみならず、地区予選ですら、優勝経験のないことだ。「アイツ、強いね」と感じさせつつ、準決勝か決勝で、実力の拮抗した相手に競り負けるのが定番。逆にいえば、延長戦の最後まで途切れない集中力を身につけたときには、世界を制しうるだろう。

 ベスト8では、グイグイ前に出る若い選手を退りながら翻弄した榎並博幸(西尾)の“いぶし銀”の組手、長髪の文化系ぽい容姿ながら、美しい打撃・投げ・組み技をみせた杉浦宗憲(日進)の意外感が印象に残った。

 その他、思ったことは…。
 勝ち星数による所属対抗戦がスタートしたが、1位は日進、2位は帯広と、地方が強い。とてもよい傾向だと思う。一方で、総本部の勝ち星が0だったことは、20年前を思えば信じがたい。職員が地区予選で敗退したことについては、東塾長としても忸怩たる思いだったろう。

 大会全般をみて「生涯を通じて取り組むという意味では、やはりこの競技の方が、無着衣MMAよりやりたかったものだな」とあらためて確信。あくまで“自分にとっては”という前提つきだが。

 礼儀作法への拘りなどは、むしろ柔道競技よりしっかりしているように思えたし、小学生~高校生の試合レベルの高さにも感心した。
 彼らのうち、何パーセントかの人材は、18歳以上になっても競技を続けることになるのだろう。
 そう考えると、きっと近い将来、彼らと古い世代が、同じ試合場で鎬を削るときがくる。そうなれば、古い世代も「まだまだ、ひよっこには負けるまい。壁になってやる!」と張り切るだろう。
 ブーム終焉により、どの競技も生き残りが危ぶまれる日本人の格闘技界。我らが空道も、衰退への道を辿るのかと思ったけど、どっこい世代のタスキが繋がったな、という感じ。
 無着衣総合格闘技やブラジリアン柔術は、まだ、これほどの規模では、少年クラスの大会を開催出来ていない。やはり、空手や柔道の流れを汲む日本武道であることは、少年層(特に地方で)の普及において大きな強みとなるのだろう。
 少年少女たちに「○△選手みたいになりたい!」と憧れられることは、今後、全日本クラスの選手のモチベーションともなるだろう。王者になったとか、いくら賞金を得たとかの一時的なプライズより、子どもたちにとっての目標となることの方が、尊いように思う。
 思わぬところに競技普及のカギはあるものだ。

(以上敬称略)

一方で、少年競技にかんしては「競技レベルの向上を求めるべきではない」ということも述べたいのだが、またの機会に。  

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