ジャケットMMA≒柔道+空手 KARATE+JUDO≒KUDO 御茶ノ水(淡路町・小川町)にある総合格闘技道場。

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主将のコラム

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column#18

試合前、コーチが言うべきこと 言わざるべきこと

 今回の全日本大会で初戦を突破した早大の選手にこんなアドバイスを送った。
「次の相手は、パンチの打ち合いの後、ハイキックを打ってくる。右ハイが来るときもあれば、左ハイが来るときもある。それでこれまで相手をKOしているから、気をつけろ」
 結果として、その選手はハイキックをガードして、自らの攻撃を打ち込み、次の試合も勝利を収めた。相手の闘い方を分析していたことが功を奏したわけだが…。

 実は、このようなアドバイスを与えることは、ごく稀だ。

「相手のアレとコレはやばいぞ」といった先入観を持たせると、その技に意識を奪われ、本来のその選手の動きが出来なくなってしまうことが考えられるからだ。
「次の相手は○▼が弱点だから、オマエの■×はばっちり当たるよ!」と、ポジティブなイメージだけを植えつけて、劣っている点は「知らぬが仏」にさせておく……その方が結果としてよい結果を招くことが多いように思う。

 もちろん、選手個々の性格によって、アドバイスの方向性は変化させるべきかと思う。今回、前述のようなアドバイスを送ったのは、それなりの長いつきあいのなかで、その選手が“相手の得意技を知ることで気持ちを乱されるようなタイプではない”と知っていたためだ。

 それにしても、基本線、試合前に選手に掛けるべき言葉は、細かな技術に関するアドバイスより「YOU CAN DO IT!!」的な励ましではないかと思う。

 主将がアマ修斗の全日本選手権で優勝したとき、セコンドは、格闘技のことをまったく知らない高校時代のクラスメイトだった。それで十分なのだ。その熱血漢の親友は、ただただ「今日のオマエは乗ってるよ!」とか「オマエが優勝する姿がみえるよ!」とか「(全然“キワ”の攻防じゃないのに他の選手のセコンドの言葉をテキトーに真似して)キワだ! 今がキワだよ!」とか、ただひたすら鼓舞し続けてくれて、結果、主将も、なんだかそんな気がしてきて(笑)、ノリノリで闘い切れた。人間なんて、案外、単純なものだ。

 一流のアスリートの指導者が、最新技術など知る由もないおじいさんだったり、その競技の経験すらない実の父親だったりするのは、結局のところ、選手のパフォーマンスを上げるのにもっとも大切なのは“メンタルのコントロール”だということの証なのだろう。

 ……それはそうと、そのときの試合に向けた戦略を共有しているわけでもない知り合いが客席から「とにかく前へ出ろ! 前へ! 前へ! 下がるな!」といった声援を選手に送るのは、どうかと思う。ひょっとしたら、その選手は、アウトボクシングでカウンターを狙う方針をコーチから授けられているかもしれないわけだし。選手を戸惑わせたり、審判に悪印象を与える可能性もある。選手のために叫んでいるというより、ただ単に、勇ましく打ち合う展開を見て楽しみたいだけなのでは?(もちろん選手と関係ない観客の人は、どんな声援を送ろうとまったくの自由)

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