ジャケットMMA≒柔道+空手 KARATE+JUDO≒KUDO 御茶ノ水(淡路町・小川町)にある総合格闘技道場。

(社)全日本空道連盟 総合武道 大道塾 御茶ノ水支部

主将のコラム

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column#27

空道ルールへの提言3

 仮にルールの改定が一切なされずとも、現行の空道ルールにおいて、以下の点において、表現の整理を行い、不明瞭さをなくすことを提案したい。

1.「有効な関節技・絞め技」の定義

現状の空道ルールでは、例えば、絞めにかんして「有効な技は、裸絞め・送り襟絞め・片羽絞め・三角絞め」と説明されるが、この通りに解釈してしまうと、創意工夫によって開発された変形の襟締めが決まった場合など「あれは有効と規定された絞めではない。反則だ」となってしまう。実際は、袖車でも、突っ込み絞めでも、小手絞りでも、ダースチョークでも有効とみなされるはずなので「頸椎にダメージを与える絞め技は反則で、それ以外の絞め技は有効とする(ただし、想定外の戦法・技術が使われた場合は、危険度・スポーツマンシップの面から考えて問題がないか、審判団がその都度審議する)」が、妥当な説明かと。足関節技に関していえば「ヒザや足首に捻りを加える技、ヒザ関節を屈曲させる技、股関節を極める技は禁止で、それ以外の足関節技は有効。具体的には、いわゆるヒールホールドやアンクルホールド、ヒザ固めなどが禁止で、ヒザ十字固めやアキレス腱固めなどが有効となる」となる。決して「認められる技は、ヒザ十字固めとアキレス腱固め。それ以外は反則」ではない。

柔道においても、記録のために、決まり手となった技を、定められた技の名称に分類するだけであって、有効な技のフォームを限定するようなルールの定め方はしていない。反則規定を定める場合、「A とB とC は反則で、それ以外は有効とする。代表的な有効技としては、D、E などが挙げられる」(図②)といった文章構成にすべき。「D とE が有効な技で、それ以外は反則」(図①)あるいは「A とB とC は反則で、D とE が有効」(図③)とアナウンスすべきではない。

図

2.「グラウンド状態」の定義

双方の選手が両足以外の1 点以上をマットに着けていれば間違いなく「グラウンド状態」なのだが、以下のような状況の場合は「グラウンド状態」が継続しているとすべきなのか、明確なルールがないので定める必要がある。

・片方の選手が立った状態(定義=両足の裏以外はマットに着いていない状態)で、もう片方の選手がグラウンド状態(定義=両足の裏以外の1 点以上がマットに着いた状態)のとき。 「待て」を掛け、立ち技で攻防を再開した審判がいたが、この状況では、攻防が続いている(双方、もしくは片方の選手が攻撃の意志をみせている)ようであれば、「グラウンド状態の継続」とみなし「待て」を掛けないべきでは? でなければ、グラウンド状態の選手に対し、立った姿勢の選手が「足を捌いてのパスガード」を仕掛けることも不可能となる。むろん、立っている選手とグラウンド状態の選手の身体が完全に離れ(いわゆるイノキ・アリ状態)、立っている側が寝技の攻防を行う意志をみせない場合は「待て」を掛け、グラウンド状態の選手を立たせて、立ち技で試合を再開させるべきだが。

・片方の選手がガードポジションからの腕十字や三角絞めを掛け、これをもう片方の選手が持ち上げ、宙に浮かせた場合。過去、第3 回世界選手権での藤松vsロシア人、2010 年の平田vs八幡などでは「待て」が掛からず、そのまま宙に浮かされた選手が関節技を決め一本勝ちしているが、本来、実戦なら持ち上げた側が相手を頭から叩き落として失神させられるところを「頭から相手を落としてはいけない」という安全上のルールによって、それが出来ないのだから不公平である。これでは、飛びつきガードポジションや、飛びつき腕十字などを仕掛ける寝技師に有利となってしまう。アマ修斗では相手を頭部から落とす投げを禁止する代わりに「相手を頭部から落として大きなダメージを与えられる高さに持ち上げた場合は、ブレイクを掛ける代わりに、持ち上げた側に1 ポイントを与える」というルールがあった。日本拳法でも同様に、相手の身体を腰の高さ以上に持ち上げれば“一本“が与えられる。空道においても「相手を頭部から落として大きなダメージを与えられる高さに持ち上げた場合は、待てを掛け、持ち上げた側に効果ポイントを与える」と定めれば、腕十字や飛びつきガードを仕掛けた側も、持ち上げられる前に自ら技を解除するようになり、公平な試合展開となるのでは?

・立った状態から技を施し、寝た状態になってから関節技・絞め技(飛びつき腕十字など)を極めた場合。立ち関節技は反則とされているが、それとは区別し「グラウンド状態」での関節技・絞め技とみなし、合法とするべき(現状、定義づけされていないので、明文化する)。 ただし、相手が寝技に引き込まれず、立った状態をキープした場合は、ブレイクとし、前項の通り、相手に効果ポイントを与えるのが妥当。また、寝技に入る前の段階で相手の関節が極まってしまう確率の高い技(立ち姿勢からの腋固め)は現状通り、禁止とすべき。

・片方の選手が立った状態で、もう片方の選手がグラウンド状態のとき、グラウンド状態の選手がタイムアップ(30 秒)を待たずして自ら立ち上がった場合。一旦「待て」を掛けてから試合を再開するのか、それとも攻防を継続させる(立ち上がり際の打撃攻防を認める)のか、明文化する必要がある。過去、相手の打撃によってバランスを崩した選手が、あえて寝転がり、イノキ・アリ状態をキープしたことがあった。彼は「不用意に立ち上がると、立ち上がり際に打撃を打ち込まれる可能性がある 」という“バーリトゥード“的認識のもと、すぐには立たなかったのだが、審判はダメージによって立ち上がれないものと判断して「有効」の旗を上げた。実際にはダメージがまったくなかったとすれば、このようなケースは審判の誤審と考えるべきか? それとも、「立ち上がり際の相手に打撃を加えることは反則」であり、選手は警戒せずに即座に立ち上がるべきだったのか? ルールが明確でないからこそ、このような疑問が生じる。 実戦性に重きを置く意味では「一度、グラウンド状態となった選手がタイムアップ(30 秒)を待たずして自ら立ち上がった場合は、攻防を継続する(立ち上がり際の打撃攻防を認める。「待て」は掛からない)」が妥当であり、安全面を考えても、大きな問題はないと思われる。最近の無着衣総合格闘技においては「立ち上がり際の攻防技術」が勝敗を分けるファクターとなっているので、競技として見劣りしないためにも、そうすべきかと。

・選手が足を滑らせて転倒した場合や、胴回転回し蹴りを失敗した場合。すぐに「待て」が掛かり、立ち技での試合再開となる事例をみたが、実戦を想定するなら、立っている側の選手が寝技や“極め”に入る意志をみせれば「グラウンド状態」と認定すべきでは?

3.「グラウンドで上になっている者は、ボディへの横からの攻撃は可」の定義

現行の「横からはOK」「床と垂直方向の攻撃は不可」といった表現では、水平と垂直の間に90 度の角度がある以上「水平よりほんのちょっと斜め上から打ち下ろした場合はOKなのか?」といった点で曖昧であり、複数の解釈を引き起こしかねない。

そこで、

グラウンド状態にある相手に対し、相手の上になっている(=相手の頭部より垂直方向上位に自分の頭部を位置させている)選手は、頭部への直接加撃を加えてはならない。頭部に直接打撃を加えてよいのは、相手の下になっている(=相手の頭部より垂直方向下位に自分の頭部を位置させている)選手のみである。また、胴に対しては、上になっている選手も、下になっている選手も、横や下(重力の加わらない方向)からの直接加撃のみ加えてよい。
具体例
・いわゆるサイドポジション、マウントポジション、ニーインベリーなどの体勢で相手を制している選手は、相手の頭部に一切の直接打撃を加えてはならない。胴に対しては、横(重力の加わらない方向)からの直接加撃のみ加えてよい。
・いわゆるサイドポジション、マウントポジション、ニーインベリーなどの体勢を相手に取られている選手は、頭部を含め相手の全身に、下や横(重力の加わらない方向)からの直接加撃を加えてよい。
・いわゆるインサイドガードの体勢の選手は、相手の頭部に一切の直接打撃を加えてはならない。胴に対しては、横(重力の加わらない方向)からの直接加撃のみ加えてよい。
・いわゆるガードポジション(クローズガード、ハーフガード、オープンガードなど)の体勢の選手は、頭部を含め相手の全身に、下や横(重力の加わらない方向)からの直接加撃を加えてよい。
・いわゆるカメ状態の相手を上から制している体勢(バックマウント、がぶりなど)の選手は、相手の頭部に一切の直接打撃を加えてはならない。胴に対しては、横(重力の加わらない方向)からの直接加撃のみ加えてよい。ただし、両選手が同体で反転し、バックマウントを取っている側の選手の頭部が相手選手の頭部より垂直方向下位に位置した場合は、バックマウントを取っている側の選手は、相手の頭部に直接加撃を加えてよい。
※上記に加え、膝関節を除く脚部に対しては、上になっている選手も、下になっている選手も、重力の加わるものも含め直接加撃を加えてよい。

といった穴のない表現をすべきかと思われる(以上青字文面は、下になっている選手がマットに対し横を向いている、両者の体が仰向けになっている…といった「身体の向き」にかかわらず、打撃が重力の加わる方向から放たれるかが、直接打撃の可否として問われるものとして記している。打たれる側の身体の向きによって、認められる直接打撃が変わるのであれば、さらなる記述を加える必要が生じる)。

4.「寝技は30 秒×2 回認められる」「マウントやニーインベリーからの極め(疑似打撃)で効果が与えられる」といった表現

「寝技が30 秒×2 回行われた後は、投げ→極めに効果が与えられることはない」「極め(疑似打撃)は、マウントやニーインベリーの体勢から行わねばならない」と思っている選手・観衆も多いのではないだろうか? しかし、現状のパンフレットのルール記載を紐解けば「相手を投げた後、中腰の体勢から放たれた強く的確な極め(2 回以上の疑似打撃)にも効果が与えられる。マウントやニーインベリーはグラウンドの体勢とみなされるが、この中腰の体勢は立位の範疇とみなされる。従って、寝技が30 秒×2 回行われた後でも、投げ→極めによって効果を奪うことは可能」と解釈できる。
 それに対し現実には、寝技が30 秒×2 回行われた後の状況では、原則的に、投げが決まった後、ただちに主審から「待て(グラウンドの展開はもう2 回終了しているから、ブレイクして、立ち技の開始線に戻れ)」の指示が出るはずであり「投げが決まったあと、1~2 秒間は、中腰からの疑似打撃が決まらないか様子をみる」といったルールが明文化されているわけではなく、曖昧である。投げの上手い選手と打撃系選手が対戦した場合、寝技が2回終了した後の極めに効果が与えられるのかどうかによって、かなり戦略も変わってくるであろうにもかかわらず、だ。

 片方の選手が立った状態(定義=両足の裏以外はマットに着いていない状態)であろうと、もう片方の選手がグラウンド状態(定義=両足の裏以外の1 点以上がマットに着いた状態)のときは、グラウンド状態とみなし「寝技が30 秒×2 回行われた後は、投げのあとの極めでは効果は入らない」と定めた方が、混乱はないのではないか?

5.「危険な投げ技」の定義

現状「危険な投げは反則」とされている一方で「鮮やかで強い投げは効果」とされている。強い=危険ではないのか? 強いが危険でない投げとは? このあたりの定義も明確にしておかねば「投げられた場合、ダメージを負った偽称をしたもん勝ち」といった現象も起こりかねない。

そこで、

頚椎や脳に重篤なダメージを与える可能性の高い投げ方を故意に行うことは反則とする。
具体例
・相手の前頭部から先にマットに着地させる投げ技(イラスト①)は反則
・相手の後頭部から先にマットに着地させ、相手の背中がマットに着かない投げ技は反則
(いわゆるバックドロップ、バスターなど=イラスト②)
・相手の頭部と胴体(主な場合、後頭部と背中)がほぼ同時にマットに着く投げ技(=イラスト③)、相手の胴体がマットに着いてから頭部が着地する投げ技(イラスト④)は認められる。この条件を満たす投げ技が鮮やかに、強いはずみをもって決まった場合は「効果」となる。

図

といった定義ではどうだろうか。

6.「体力指数差が00 以上の場合は、掴んでの打撃は禁止」という表現
全日本大会パンフレットに掲載されているルール説明には「身体指数差が20 以上ある場合は掴んでの打撃、30 以上では蹴撃も禁止(投げは可)」とあるが、この説明は誤解を招きやすく、正確にいえば「身体指数差が20 以上ある場合、片方もしくは双方の選手が相手の道着を掴んだり、体を抱え込んだりした状態においては、頭部・上肢による打撃(パンチ・ヒジ)は禁止、30 以上ある場合は下肢による攻撃も禁止」である。相手に道着を掴まれていれば、自らは相手の道着を掴んでいなくとも打撃を行うのは反則となるのであり、過去、平安vs 吉澤(2007 年全日本無差別)などで、相手の道着を持たずに打撃を繰り出した側の選手に反則が与えられている。

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