一般的に、格闘技系競技においては、試合が終わって、次の試合まで
の期間を……
……くらいに分けて考えて、練習内容を変化させていくのが一般的だろう。いわゆる期分け=ピリオダイゼーション※2である。
転換期と通常期と試合期の期間の比率は、1:7:2とか、それくらいか。例えば、試合間が22週(5ヶ月)ある場合、OFF が1週、転換期が2週、通常期が14週、試合期が4週、調整が1週といった具合。ただし、予選大会が終わって1 ヶ月後に本戦大会があるような状況=短期間のピリオダイズの場合は、OFF と転換期と通常期を短くして試合期とテーパーの日数を維持する(OFF と転換期と通常期を合わせて2週、試合期を2 週、調整が1 週…といった程度)のが妥当だろう。
こういった練習計画を立てることは、確かに効果的だ。ただし、あくまで“目処”として立てておき、その時期、その日のコンディションに応じて、臨機応変に練習メニューを変化させることも肝要だろう。ひとたび計画を立てると、(特に律儀な日本人の場合)身体やメンタルがどんな状況であろうと、是が非でもそれを守ろうとしてしまいがちなので、気をつけたい。
さらにいえば、競技としてでなく武道として考えるならば、そもそも、ピリオダイゼーションなど取り組むべきではあるまい。
常在戦場! 強い時期と、心身が弛んでいる時期のバイオリズムなどな
く、恒常的に強さや緊張を保ってこそ、武道だともいえる。
従って、可能な限り最高の成績を収めることを欲する若者(経歴を得ることがアイデンティティーに繋がる世代)には競技的なアプローチを処方しつつ、「オレ、日々の稽古の延長として、試合で技を試してみたいだけなんで…」というような武道主義者には、波のない稽古を与えることが相応しいだろう※3。指導者は、その日、練習に参加しているメンバーそれぞれの考え、心身の状態に配慮してメニューをデザインせねばならない。まぁ、立てたピリオダイズ通りに現実が進行することなんて、まず、ないだろう。
※1筋力・パワーは、トレーニングを長期間積まねば効果が現れにくく、その代わり、トレーニング休止後も、すぐには発揮能力が落ちない。逆に、全身持久力(心肺機能)は、短期間のトレーニングで向上させやすく、その代わりに、トレーニングを休止すると、すぐに低下する。それぞれの特性を考えると「試合から遠い時期に筋力・パワーをアップさせるトレーニングを積んでおき、試合が近づいたら全身持久力向上のトレーニングメニューに比重を置く」が合理的と考えられる。
※2ピリオダイゼーションに関しては、試合間で考えるのみならず、その人の競技人生全般で考える(小学生までは○△で、10代では■×を重視して、25歳を過ぎたら※▼に取り組む…とか)、1 週間単位で考える(月曜は軽め、火・水がハードにスパー系で、木・金は中強度×量多めで、土は軽め…とか)など、マクロからミクロまで、さまざまな周期でイメージを持っておくことが勧められる。
※3例えば、主将は、ここ数年、ブラジリアン柔術の大会に出るときは、前日まで、いっぱいいっぱい稽古している。それは「せっかく、気持ちが高ぶって稽古したくなっているんだから、やればいい。それで仮に明日のパフォーマンスが落ちるとしても、1 年後、10 年後のためには、稽古は積めば積むほどよいのだから。試合のために練習しているんじゃなくて、稽古のモチベーションを上げるために試合があるんだから、試合のために稽古を休むのは本末転倒!」という考えからだ。もちろん、キャリアを求めていた10~20 代の頃は、まったくこんな発想は持ち合わせていなかった。
また、試合はともかく、昇級・昇段審査にかんしては、受験日が近いからといって稽古メニューを変化させることなく、通常通りの稽古を行ったうえで、平常心で当日を迎えればいいと思う。試合はスポーツ競技として挑み、審査は武道として挑むべし……が、一般的ガイドラインか、と。