「こら~、上体を起こしすぎるな」
って、後輩のスパーをみているとき、よく指示するんだけどな。
どうしても、ヒザ関節や股関節や肩回りをリラックスさせた状態を維持できないんだよな。カチンコチンに力が入ってさ。アゴの上がった状態で殴り合ってる。あ~ん、どうして何度言っても言うことを聞いてくれないの、と。
でも、ニュースをみてたら気づいたんだ。こりゃ、本能的な行動なのかもしれないってな。
TPPを巡る議会で国会議員同士が言い争いをしててさ。そしたら、エキサイトしてきた二人は立ちあがって、胸と胸を合わせて、終いにゃ互いにつま先立ちみたいな感じでのけ反っちゃって。「オレの方が背が高いんだぞ。デカいんだぞ。だから言うこときけ!」てな感じでな。お偉い60歳ぐらいの議員さんたちがだよ。
子どもと「ダーウィンがきた!」なんかをみていても、クマも猫もコアリクイも、敵が来たときの基本姿勢は共通して威嚇のポーズ。後ろ足で立ち上がり、背伸びして、前足を大きく広げ、毛を逆立て、体を大きくみせる。
そういや、街中での若者同士の小競り合いでも、プロ野球でキレた監督が審判に抗議するときでも、たいてい、背伸びして胸と胸を突き合わせて、相手を睨みつける。
これってさ、生き物の本能なのかもしれないよな。体のサイズを比べあうことで勝敗を決し、無用な傷つけあいを避け、かつ、強い種を残す。そんな儀礼的な行動として、“威嚇のポーズ”をとる、と。
実戦性でいえば、この“威嚇のポーズ”は、ポンと胸を押されれば後ろにひっくり返ってしまうような脆い姿勢なんだよな。太ももの前面の筋肉と後面の筋肉が両方縮んで(共縮)ヒザが突っ張り、足幅が狭く重心が高く、結果としてバランスが非常に悪い。
それでも、敵を前に、興奮と緊張を感じるとこの姿勢を取ってしまうのは、結局のところ、実弾を撃ちあう闘いを避けたいってことなんだろうな。
その本能を殺して、リラックスして動き回れっていう、かなり難しい課題を与えているわけだ、格闘技ってヤツは。だからこそ、面白い。
そうだったのか、とポンとヒザを叩いたりして。
ま、仮説に過ぎんがね(笑)。