コラム♯9で「水道橋同好会の場合、基本稽古や移動稽古は、号令の間隔は長めに取り、一方でひとつの技の反復回数を減らすことで、一つひとつの技は集中力をもって正確に繰り出し、なおかつ時間を消費しぎず満遍なく審査内容をこなせるようにしている」と述べた。
これについて、もう少し詳しく、説明しておこう。
大道塾の基本稽古の完成形は、ジャブから始まりヒジ打ちまで手技を計130 号令、前蹴りから金的蹴りまで足技を計250 号令、約15分を掛けて行うものである。15 分間のうちにこれだけの量をこなすには、かなりハイペースの号令掛けとなる。従って、その号令に従って技を繰り出すだけで、技術練習になるとともに、心肺機能に負担を掛けるフィジカルトレーニングともなる。
稽古の最初に基本稽古を行えば、15 分間のジョギングと同様の有酸素運動を済ませた状態となるのだから、つまりは、技術練習とアップを兼ねた合理的なメニューなわけだ。
ただ、ここで気をつけねばならないのは、よほど熟練した者でなければ、号令に合わせたペースで動こうとすると、ひとつ一つの技がいい加減な動作になってしまうということだ。
果たして、基本稽古において、きちんと足刀を返した前関節蹴りを蹴れている者がどれだけいるだろうか?
技のフォーム練習と、ウォームアップ。二兎を負うばかりに、フ
ォームがおろそかになっている。そのおろそかになったフォームが
すっかりクセづいてしまっている…。そんな悪循環に陥っている者
がいないだろうか?
主将の意見としては「基本稽古を、手技130号令、足技250号令、約15 分でこなすのは“完成形”であり、初段以上が行うべき高度なもの。白~色帯が無理にこなそうとすると崩れたフォームを身につ¥けてしまうことになる。白~色帯は、レベルを下げた基本稽古を積み、正しいフォームを維持できる範囲で、反復のスピードを上げ、反復の回数を増やしていくべき」である。
そして、そのレベルを下げた基本稽古というのが「号令の間隔は¥長めに取り、一方でひとつの技の反復回数を減らすことで、一つひとつの技は集中力をもって正確に繰り出す」やり方というわけだ。
たとえば、号令のペースが速いと、パンチを打ってもベースの構えに戻らず、流れで次のパンチを放つ動作に移行したりしがちだが、号令の間隔を開けることで、きちんと半身&オンガード・ポジションに戻して静止してから次の動作に移ることが可能となる。
レベルを落とした基本稽古を積んだうえで、“基本稽古の完成形”に近づいていくことを勧めたい。