ジャケットMMA≒柔道+空手 KARATE+JUDO≒KUDO 御茶ノ水(淡路町・小川町)にある総合格闘技道場。

(社)全日本空道連盟 総合武道 大道塾 御茶ノ水支部

主将のコラム

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column#44

最後の……稽古内容について考える その5
初心者への投げ技の指導法

 中学校の体育の授業で武道が必修化されたことにより、初心者への投 げ技(柔道)の指導法がどうあるべきか、よく話題になる。
 一般的には「何よりも、まず受身をしっかり教えよう! そして次に、上肢の操作と立ち位置の移動により相手のバランスを崩す手順を教え、それから技を“掛け”させよう」なんだろう。
 それに対し、主将の方針がどうかって言ったら、てんで逆。
・ 最初に受身は教えません。
・ いきなり、投げ技を掛けさせます。
だな。
 学校の先生たちは、投げ技での事故事例にビビッて「投げは危ないから、 1 年間、徹底的に受身を教えるくらいでいいかも・・・」くらいの話をしている みたいだけど、そんなメニューじゃ、本来の目的である「武道の面白さを体感させる」どころか「あ~あ、武道ってホント、つまんねぇな。2 度とやらねぇ」と思わせるだけだ。
 だからこそ、最初に、一番、面白い、気持ちよい部分、すなわち、投げが 決まった瞬間を味わわせて「これって楽しい。もっとやりたい!」というファ ーストインプレッションを与えるべきか、と。
 そして、その成功体験を確実に導くために、技を受ける側が最初からバランスを崩した状態(“受け”が一歩だけ歩を進め、そのポジションで静止した状態)をつくり、技を掛ける側は、その状態に対して、技を施す。
 いってみれば、“一歩だけ移動打ち込み”だ。上肢の操作+立ち位置の 移動+技の“掛け”という複数作業をいきなり踏ませると、崩しがうまくできず“失敗体験”を重ねて、結果「これ、オレ、無理・・・」となりがち※1。そこで、最初は1工程に絞る。どこに絞るかといえば、“一番大切な(でも地味で難しい)動き”でなく“末端の(でもダイナミックで気持ちいい)動き”でいいか、と。
 でも、それじゃぁ、投げられた側は、受身を知らないから怪我してしまうのでは? と思うなかれ。簡単なことだ。実際に投げられるのは、先生のみでいいのだ。生徒は常に投げるのみ。気持ちいいことをするのみ。先生(+ クラスに柔道部員がいればその者も)が順に生徒たちの相手を務め、生徒の不完全な投げに対しても、豪快に宙を舞い、受身を取る。先生が相手をしてくれるのを待つ間、生徒同士は、技を掛けるけど転倒しない程度の打ち込みを繰り返す。
 こういったメニューをある程度、重ねて、楽しませてから「じゃあ、生徒同士で投げても大丈夫になるように、受身を学ぼう」「バランスよく立っている相手のバランスを崩す作業から始めてみよう」という段階に進むべきか、と。 要は、末端からの逆算的なビルドアップ。

 ちなみに、水道橋支部で、初心者に教える道着の襟と袖を操作して施 す(要するに柔道の)投げ技は、大外刈・大内刈・支釣込足・体落の4 種のみ※2。まぁ、中学校の授業レベルなんじゃないかな? 小外だ、小内だ、 背負だ…といろいろ教えてしまうと、結局、消化不良を起こすので、どの指導者が指導する場合も、自分の得意・不得意にかかわらず、この4種の指導をするよう定めている。この4種で、とりあえずは、右前隅~右後ろ隅~ 左後ろ隅~左前隅、いずれの方向にバランスを崩した場合でも技が施せる。本来、大外刈と支釣込足は2ステップ、大内刈と体落は3 ステップで行うものだけど、リズムを掴みやすくするために、常識破りながら、すべて3 ス テップで共通性を持たせて行わせてみたりもする。
 で、これ以外に初心者に教える投げ技は、チェスト・トゥ・チェスト(相撲組み)の状態からの切り返し(小外掛け)・大腰・サバ折り、離れた状態からの両足タックル。あとは首相撲の基礎を教えて、柔道組み・相撲組み・タックル系・首相撲系のいずれにも対応できるようにしている。なお、組み技格闘技や剣道の経験がまったくない、右利きの人が入門してきた場合は、組み技も左足前の構えで覚えさせている。

※1指導する立場になる頃には、誰しも、自分が初心者だった頃の苦労なんて忘れてしまい「なんで、こんな簡単なことがで出来ねぇんだよ!」と思うものだ。しかし、実際にはいきなり「右足はこう、左足はこう運ぶ。そのとき、右手はこう押して、左手首はこう返して……」といった“同時に四肢に別の動きをさせる”指示を与えられて、すんなり出来る者など稀だ。今、イスに座って、この文面を読んでいるならば、試しに、同時スタートで、両手で2 拍子で机を、両足で3拍子で床をタップしてみれば、よく分かる。ドラムを叩いている人にとってはたやすいであろうそれだけの作業が、いかに出来ないことか。上肢・下肢の2 分割でさえ、それだけ難しいのだから、初心者が四肢に同時に別作業をさせられないのは当然。自分がそれを出来るのは、最初は頭で考えて、四肢の動きを個別に覚え、長い長い反復を積んで、結果、感覚的に動ける域に達したからなのだということを、思い出すべきだ。だから、まぁ、最初からすべてを説明しようなんて思わないで、ちょこっと足の動き を説明して、やらせて、わざと腕の動きは間違わせておいて、次にその部分の説明をして、また、 やらせて・・・・・・。いきなり10 分説明しても、理解しきれないので、2分説明して、少しやらせて、ま た2分説明して…くらいを繰り返すのが、いいんじゃないかな、と。

※2投げた後のポジション取りのことを考えると、インサイドガードに陥りやすい大内の代わりに小外の方がいいかな、と思ったりもするんだけどな。ま、大内の方が一般的な技だしな。相手に背中を向ける技…背負、一本背負、内股、払腰、大腰、体落、首投げ(腰車)などのなかで、何を初心者に教えるべきかは、判断が難しいところ。水道橋支部では、大腰と首投げは、チェスト・トゥ・チェストの状況における技として指導するので、道着の襟と袖を操作して施す(要するに柔道の)投げ技としては、教えていない。残る技のなかで、まず一本背負は、投げた後のポジショニングにおいて、バックチョークに捕えられる危険度が高いため、推奨できない。背負投や内股は、(国内の)柔道の試合で使われる頻度が高く“これぞ美しきイッポンを取る日本の柔道”というべき技だが、部活レベルで日々、打ち込みを積むからこそ、実戦で使えるレベルになる技であって、柔道経験なく空道をはじめる人が取り組んで、試合で使えるレベルまでに高めるのは至難かと。払腰は、巻き込んで投げて同体で倒れてしまい、バックを取られる率の高い。それに対し、体落は、上級者同士の柔道の試合ではあまり見かけない技かもしれないが、総合格闘技ではけっこう掛かる(柔道ほど、バランスの維持に神経を集中しておらず、一方の足に体重の大半を預ける局面が多く生じるため)し、比較的に習得しやすく、なにより、他の技と比べて、投げた後に立位をキープしやすくサイドにも出やすい(要するにニーインベリーを取りやすい)。これらの理由から、体落を選択している。もちろん、柔道経験を経て、空道に取り組む人は、背負や内股、袖釣込腰なりを存分に使うべし。

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