ジャケットMMA≒柔道+空手 KARATE+JUDO≒KUDO 御茶ノ水(淡路町・小川町)にある総合格闘技道場。

(社)全日本空道連盟 総合武道 大道塾 御茶ノ水支部

主将のコラム

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column#49

もしも相撲で、はたき込みとか、引き落としが禁止されたら

 逸ノ城が引いて大関・横綱に勝ったことで「けしからん! 格上相手に引いて勝つとは」というような評が出るんだろうな。やっぱり。
 相撲ってさ、押して押して前へ前へ…電車道ってのが王道とされてるわけで。
 はたき込みとか引き落としで勝つ力士がいると「せこいヤツ」って感じじゃない?
 で、考えてみたんだよ。
 もしも、はたき込みとか、引き落としが禁止されたら、どうなるだろうって。
 バランスなんか無視して、相手に体を預けて前に出る…それで勝てるようになるんじゃないかな?
 でも、そのスタイルって、格闘技としてみた場合、穴だらけの戦法なわけで。
 そう考えると、はたき込みや引き落としをするってことは、嫌われ者になりながら、
「 オマエは予定調和に守られているだけで、相手が支えてくれなければ、立っていることすら出来ていないんだよ、それじゃ、現実の闘いとして考えた場合、ダメだろ。最低限、転ばないバランスを保ちながら闘えよ 」
 ってことを相手に教えてやっているってことなんじゃないかな。
…で、空道に置き換えて考えてみると、寝技ってのは、このはたき込みみたいなものだと思う。
 空道は、路上での護身において有効と思われる技術が発揮されるよう、つくられた武道競技。
 だから、集団戦の状況や、武器・噛みつき・目突といった攻撃に対して脆い"相手とくっついた体勢(つまり寝技)"を避け※1、打撃と、投げで闘うのが理想とされるんだけど、一方で、我々は、1994年にスタートしたUFCでの柔術選手の活躍により「1対1で人が争えば、打撃によるKO決着となる前に、高い確率で両者が組み合って倒れてグランドの攻防となって、一度グランドの攻防になったら、なかなか立ち技の攻防には戻れない。寝技の対処が出来なければ、立ち上がるチャンスを得る前に、絞め落とされたり、脱臼させられたりしてしまう」ことを学んだ。
 空道の試合で、寝技30秒の時間制限のなかで、絞めや関節技で一本を取るってことは、
「 打撃が空道の本分だとはいえ、こんなに簡単に寝技でやられちゃうんじゃ、オマエは、立ち技で勝負するだけのスタートラインに立ててないよ。最低限の寝技のディフェンスが出来なきゃ、立ち技をやる資格はないんだよ 」
 って相手に教えてあげているってことなんじゃないかと思う。
 相撲ではたかれてバランスを崩した力士や、空道で寝技に屈した選手が、
「 オレは正々堂々と闘おうとしたのに、相手がセコい手で勝っただけで、ホントの負けじゃない 」
 なんて思ったら、恥ずかしい話。
「 押し相撲をする、打撃をする…そのための最低条件すら自分は満たしていなかった 」
 と恥ずべきなんじゃないかな?

  ……ところで、大相撲でモンゴル人が活躍してるけど、彼らは、モンゴル相撲時代の練習において"投げ技(相手のバランスを崩す手順)"の技術練習(いわゆる打ち込みなど)を豊富に積んでから、来日してるんじゃないのかな?
 日本の相撲部屋の稽古って、テッポウだとか四股踏み、股割り、摺り足だとかの基礎練習とスパー的なぶつかり稽古・申し合いがメインで、その中間に位置するはずの技術練習メニュー(他の格技でいうところの「打ち込み」「ドリル」「約束組手」「シチュエーションスパー」など)がほとんど与えられていないような気がする。基礎を磨き抜いて、あとは実戦(押し相撲)のなかで自然に覚えろってな。
 みんながみんな、その伝統のなかで争うなら公平だけど、一部の人間が「押し相撲以外の技をつくった状態」でその輪に飛び込んだら、そりゃ有利だよな。
 そこそこの強さの相撲取りを「即席栽培」したければ、各部屋の土俵の数を6つくらいに増やして、もっと合理的に押し以外の技術の反復練習できるようにした方がいいんだろうけど、1つの土俵をみんなで囲んで見守るなかで先輩力士が胸を貸すのが崩しちゃいけない伝統なのかな? その伝統が続くかぎり、相撲部屋入門前に、モンゴルなり、学生相撲なりで技をつくってきた新弟子が(ある程度までは)急激に番付けを上げるのは当たり前だよな。
 伝統って大事にしたいんだけど、誰かがぬけがけしたら、みんなそれに合わせるしかない。グレイシー柔術の人たちはUFCを「それぞれの格闘技が闘う場」にしたくって、互いの格闘技の技術を教え合わないようにしようとしたのに、少しずつぬけがけする輩が生じて、いまはもう、み~んな柔術の技術を使うし、柔術の選手も普通に打撃を出す。そうじゃなきゃ勝てるわけがない。それと同じだよな。

※1 かつてヴァーリ・トゥードにおいてはマウントやニーインベリーが絶対的に有利とされるポジションだったけど、現在のUFCでは、インサイドガードからのパウンドや相手に片足を絡まれた状態からの肘打ち、あるいはいわゆるマットヒューズポジションからのパンチの方が、むしろ有効に使われている。それに対し、空道においては、今でも、マウントやバックマウント、ニーインベリーが"効果"ポイントを認定されるポジションであり、相手と体を密着させた状態で上方から打撃のジェスチャーをしてもポイントは与えられない。これをもって「空道は進化していない」とみるべきかといえば、そうではあるまい。集団戦を含めた護身のシミュレーション的意味合いを競技に求めるなら、相手が抱きつくことのできる体勢を取ることは避けるべきポジションであり、下肢で相手を制圧しつつ上半身は起こした体勢こそが、周囲を見渡すことが可能かつ、相手に抱きつかれず即座に立ち上がれる状態であることにかわりはない。

※ このコラムは以前に御茶ノ水支部ブログで掲載した内容に加筆・修正を加えたものです。

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