この度の連盟会議の結果「現状、ジュニア全日本選手権においては、小学4年生以上がU13クラスへの出場が認められていて、小4と中学1年生が対戦する可能性があり、これは危険なので、U11クラスを新設する」こととなった。
この決定にかんして、危惧するのは「これまでは小4くらいで全日本大会出場を目指す児童は少なかったのに、これからは増える」こと。つまり、若年での競技が活性化することだ。
国内において、多くの武道競技の少年大会は盛況である。それが、組織の運営資金源となっているケースも多い。また、それによって「5年後、10年後、世界に通用する選手が育成されている」とみる向きもある。だから空道も、少年大会をより盛んにするべき……なのだろうか?
現状、スポーツ競技界では「少年期には、あまり試合での勝利に固執させない、そのためには試合の機会自体をあまり設けない」方針が潮流となっている。
アメリカでは、高校生になっても、全国大会がなく、州大会までしかない競技が多い。しかも、シーズンによって取り組む競技を変えさせるのが通例で、アメフトとレスリング、バスケットボールと野球といった具合に、2つのスポーツで活躍する選手も多い(※ここ最近は1つのスポーツに集中する選手も増えてきているようだが)。
ヨーロッパでは、学校の部活動ではなく、地域のクラブチームが、少年がスポーツに取り組む場である。中学に入学しようと、高校に入学しようと、同じクラブチームに所属し続けられるからこそ、指導者から、5年、10年後のベストパフォーマンスを見据えた指導を受けられる。
これらに対し、日本の部活の指導者たちは、自分の指導実績を得るために「2年後の〝全中″ですべてを出す」「2年後の〝高校総体″にすべてを懸ける」よう、生徒を叱咤激励しがち。その傾向を助長するのは、少年の大会をお涙頂戴のストーリーに仕立て上げることで利益を得るマスコミ業界だ。中高部活動での体罰問題が肥大化したのも、こういった大人の事情が背景にあるからだろう。
結果〝一意専心″でひとつの競技に週6日、一年中打ち込むことが美徳とされる日本で育った選手たちは、10代のうちに、精神の面で燃え尽き症候群に陥ったり、身体に故障を抱えてしまうケースが多い。
それが、多くの競技において「少年の世代の世界大会では、圧倒的に日本が世界一なのに、大人になるとアメリカやヨーロッパがトップ」となる要因なのだ。
柔道にかんして、フランスでは「子どもから試合をやらせるのと、15~16歳からやらせるのとでは、幼少時から試合をやらせた方がメダリストが出るかというとまったくそんなことはない」と統計的に割り出されているそうだ(「ゴング格闘技」2015年3月号P94)。
それでも、フランスで少年柔道が盛んなのは、武道に求められているのが道徳教育であるからに他ならない。
日本の空道においては、ありがたいことに(苦笑)、中・高の部活ではなく、町道場で少年を指導するシステムが構築されている。道場、すなわち地域のクラブチームで、長期に渡って弟子を指導し続けられるのに、わざわざ他のスポーツ同様に、U13やU16で日本一、世界一を狙わせて完全燃焼させてしまったのでは、もったいない。
ぜひ、少年期の指導においては、目の前の大会で勝つためのテクニックより、基本稽古・移動稽古、受身などや、礼儀作法を学ばせることを重視して欲しい。
例えば、U19の全日本王者となった者が、翌年、初エントリーした一般クラスの全日本選手権で活躍すれば「やっぱり早期から競技に取り組んだ方がよいのだな」と解釈されやすいだろうが、それから7年後、26歳となったその選手のパフォーマンスが19歳の頃とあまり変化がなく、18歳で競技をはじめて26歳になった同じ年の選手に、敗れることだって十分にあり得るのだから。
むろん、緊張や恐怖に打ち克つ心、勝利の喜び、敗者を思い遣る気持ち、敗戦の悔しさをモチベーションに転化する思考……など、試合を通じて得るものは、子どもにとっても有益である。「子どもに試合をさせることが悪」なのではなく「子どもの試合成績にこだわりすぎることが悪」なのだ。