今季より、「ドリル&スパークラスには参加できないが、それ以外のクラスには月何度でも参加可能」である「初心者会員コース」の会費を5,000円から3,637円(税込み4,000円)に値下げした。この額は、業界的にみて、かなり安い額であると思う。
価格破壊的なレベルに会費を下げることは、業界のために必ずしもよいこととは言えないし「初心者は教わる量が多く、経験を積んだ人は教わることも減っていき逆に後輩の面倒をみたりするのだから、むしろ、初心者の会費より黒帯の会費を下げるべきではないか?」といった考え方もあるかもしれない。
しかし、一方で思うのは「時を経てチームのレベルが上がり、メンバーが黒帯ばかりになったとき、そのチームは衰退への道に向かいつつある」ということだ。
例えば、スポーツクラブのスタジオレッスンでは、常連がインストラクターの周りの位置を占拠し、レッスン前後は常連同士だけでの会話で盛り上がり、初めてレッスンに参加したビギナーに疎外感を与えてしまう→結果としてビギナーが寄り付かなくなり次第にそのクラスの参加者が目減りしていく……といったケースはよく耳にする。
フランスやドイツでは大人が嗜みとして柔道をはじめることに対応したクラブチームが数多くあるようだが、国内における社会人柔道クラブといえば、学生時代に柔道を経験してきた者同士が乱取りを行うばかりで、大人になってから柔道を始めようと思った人を対象とした指導カリキュラムに乏しく、このことが柔道の社会への(≒部活動以外での)普及を妨げている印象がある。
私は、これらを反面教師としたい。
我々のチームも結成10年を経て、おかげさまで黒帯も増え、毎度充実したドリル&スパーができるようになってきたからこそ「自分たちが心地よくスパーしている場の隅に、何をしてよいのか分からず、委縮している初心者を置き去りにしてはいないか?」と、いつも反省したいと思うのだ。
初心者こそ宝。やがてベテランは一人、二人と、病気なり転勤なり家庭の事情なりで去っていき、減っていくことが必然である以上、後進の育成に日々時間を割いていなければ、気づいたときにはベテランの練習相手も不足する状況となる。結局は自分の首を絞めることになるのだ。
また、初心者だって誰だって、自由に技を繰り出すのは楽しいから「スパーをしたい」と思うわけだが、型(カタチ)が出来ていないのに、スパーを積んだところで、かえって悪い癖がついてしまうケースが多いので、初心者には、十分に技術講習のクラスに参加して一定レベルの技術を得てから、一般会員に会員コースを変更してドリル&スパーのクラスに出て欲しいという思いがある。
そんなわけで、より多くのビギナーに技術講習クラスに参加してほしく、値下げが妥当と判断した次第。どうか、武道・格闘技未経験のみなさん……我々業界にとっての「宝」のみなさんで、技術講習クラスが盛り上がりますように。
※2024年08月23日追記:このコラムの文中に記されている会費額は、このコラム執筆時の額です。会費の額は経年により変化しますので「入会案内」にて、ご確認ください。