稽古メニューは時間でなく、パーセンテージで考えよう
「武道なのだから、稽古を行うかぎり、基本稽古を必ず毎回20分間程度、移動稽古を週に1回20分間程度は行うべきだ」
そんな意見を聞くと、環境の違いというものに配慮していないのではないか、と思う。
週6日稽古を行う常設道場もあれば、週1回だけ稽古する同好会もあるのだ。そのような規定を設けられたのでは、週1回2時間だけ稽古を行うチームは、基本&移動稽古で毎回40分前後を費やすことになる。残りの80分間で、対人での打撃フォーム練習、ミット打ち、受身、投げや寝技のフォーム練習、そして打撃・投げ・寝技のスパーリング、さらにはフィジカルトレーニングまでこなすのは、至難の業だ。
着衣の総合格闘技でパフォーマンスを向上させるためには“やらねばならぬ練習メニュー”があまりに多い。だからこそ面白いともいえるのだが、上手く練習メニューをデザインしないと、特定の技術分野がスッポリ欠けた選手を量産することになりかねない。
稽古することの最大の目的は、生徒のパフォーマンスの向上という“結果”であって、毎回の稽古の“武道的なアティテュード”を維持したいがために、そこをないがしろにしては、本末転倒だろう。
そこで提案したいのが、稽古メニューをどのようにデザインするか考えるうえで「稽古総時間量に対するパーセンテージを基準とする」ということだ。
具体的には・・・
基本稽古 5~7.5%
移動稽古 2.5%
ミット練習 10%
受身 2.5%
対人での打撃のフォーム練習(いわゆる約束組手など) 15%
対人での投げのフォーム練習(いわゆる打ち込みなど) 6%
対人での寝技のフォーム練習(いわゆるドリル練習など) 4%
空道ルールでの(マス)スパーリング 17.5~20%
各シチュエーション別のスパーリング 15%
自由練習(サンドバッグ打ち 技研など)もしくは技術学習 15~17.5%
基礎的な体力トレーニング 2.5%
応用的な体力トレーニング 0~2.5%
(上記%は、1週間の総稽古時間のうち、毎回行うウォームアップやストレッチに掛ける時間を除外した時間量を100%とした場合の比率)
・・・これくらいの配分を指標としてはどうだろうか。
週6日×2クラス×2時間(+ウォームアップ)の稽古があるチームなら、基本稽古に掛ける時間は週に72分から108分、移動稽古に掛ける時間は36分。1週間のうち、基本稽古を4~6回、移動稽古を2回実施するルーティンになる。
週1回×2時間(+ウォームアップ)の稽古しかないチームなら、基本稽古には週に6分から9分、移動稽古には3分しか時間を割けないことになる。このような場合は、各回の稽古で9~12分を基本や移動に充てる時間とし、パンチの基本稽古のみ行う週→蹴りの基本稽古のみ行う週→移動稽古の前半のみ行う週→パンチの基本稽古のみ行う週→蹴りの基本稽古のみ行う週→移動稽古の後半のみ行う週・・・といった具合に6週単位でルーティンを組むくらいが、妥当かと思う。
なお、水道橋同好会の場合、基本稽古や移動稽古は、号令の間隔は長めに取り、一方でひとつの技の反復回数を減らすことで、一つひとつの技は集中力をもって正確に繰り出し、なおかつ時間を消費しすぎず満遍なく審査内容をこなせるようにしている。